長年、子どもの体力低下が指摘され続けています。その大きな要因として身体活動をともなう運動やスポーツとの関わりが希薄なライフ・スタイルを挙げることができます。近年では、学校や地域での身近なスポーツクラブの設立や遊び場、スポーツ施設の整備などにより、10代(10歳~19歳)の半数は週に5回以上の運動をおこなっています。しかし、同時に過去1年間にまったく運動を行わなかったとする子どもは、14.4%(2009年)となっており、増加傾向にあります。このことは、運動・スポーツとの関わりを持つ子どもと、そうでない子どもの二極化が進んでいることを意味しています。そのなかでも、運動・スポーツと関わらない子ども(そのライフ・スタイル)の増加という点において、生活習慣病の予防という側面から大きな問題が提起されてきます。
このような子どもの生活環境は、塾や習い事などの増加により余暇の「時間」が制約されてきたことや身近な遊び場「空間」の減少、同年代の子ども「仲間」の減少の影響によるものとされています。このような社会環境の中では、身体活動の減少にともなう体力の低下はもとより、自らの身体の状態に気づきにくくなってきます。そのことで、日常生活の中でつまずいて転倒したり、転倒した時に身体を保護することができずに怪我を負うといった事故につながってきます。このようなことで、身体の外に対しての恐怖心ができ、さらに生活行動を狭めるといった悪循環にもつながってきます。私たちの身体の外には、生活環境があり、そこには親や近所の人、友達といった様々な人の身体があります。日常生活の中での身体活動が狭まるということは、自らの身体だけでなく、周りの世界や人との出会いを感じる身体感覚を狭めることでもあります。近年、子どものコミュニケーション能力の低下が指摘されますが、それはこの身体感覚の狭小化とも関連するのではないでしょうか。
そこで、私たちは、まずは日常生活のちょっとした時間を使い、身体に気づいていけるような生活や運動の方法について紹介し、身体の心地よさやのびやかさを感じてもらえるように子どもだけでなく、親子での活動、友達同士での活動をサポートしていくことを念頭に置いています。子ども自身が、自らの身体との出会い(気づき)を通し、身近な親子の間で、家族の間で、そして新しい友達との間で身体的な出会い(コミュニケーション)を深めることができるようにサポートしていきたいと思います。子ども自ら、さまざまな生活環境、自然の中での冒険(チャレンジ)に出かけていけるようになってもらいたいと願っております。