3.薬に関する簡単な説明
病院を受診すると摂食障害の患者さんにお薬が処方されることはよくあります。しかし、大切なことは、お薬は摂食障害の治療の補助的な役割でしかないと言うことです。つまり、摂食障害はお薬だけでは治りません。
お薬は、摂食障害の患者さんの症状や合併症に合わせて処方されます。では、次にその代表的なお薬について見ていきましょう。
1. スルペリド(商品名ドグマチールなど)
胃腸の動きを改善させる胃薬の一種ですが、脳にも働き、抑うつ症状を改善させる効果もあります。
2. パロキセチン(商品名パキシルなど)
選択的セロトニン再取込阻害薬(Selective Serotonin Reuptake Inhibitors)、略してSSRIと呼ばれるグループのお薬です。摂食障害の症状の一つとして強迫性障害があります。強迫性障害とは、「食べたらダメ」という強い思い(強迫観念)により、全く食 べなくなったり、食べても吐いてしまったりする状態のことです。この薬は、強迫性 障害を改善させる効果があります。また、抑うつ症状も改善させる働きがあります。
3. リスペリドン(商品名リスパダール)
4. オランザピン(商品名ジプレキサ)
非定型抗精神病薬と呼ばれる薬の一つです。強い不安や抑うつなどの精神症状を改善させる働きがあります。肥満恐怖が強い患者さんに処方されることがあります。
5. リン製剤
摂食障害の治療は栄養療法が大切になりますが、極度の飢餓状態から急に栄養を取るとリフィーディング症候群と呼ばれる合併症を起こすことがあります。リフィーディング症候群は低リン血症のような電解質異常に伴いけいれん発作を起こすことがあるためその予防としてリン製剤を使用します。
6. 各種便秘薬
摂食障害の患者さんは、便秘や腹部症状を訴えることが多いです。そのため、極度の便秘に対する治療薬として処方されることがあります。しかし、便秘薬の使いすぎは、栄養障害の原因にもなり得るため注意が必要です。
7. カルシウム製剤、ビタミンD製剤
骨粗しょう症の予防・治療のために処方されることがあります。
しかし、大切なのは栄養療法で、その予防・治療効果は不明です。
8. ホルモン製剤
摂食障害の合併症として生理不順や、無月経があります。無月経に対する治療としてホルモン製剤を使用することもあります。
まとめ
上記に紹介した薬以外にも実際には様々な薬が使われることがあります。しかし、薬物療法は補助的な治療であることを理解し過度に薬に頼らないことが大切です。